不倫と言う言葉が世間に認識されるようになったのは、バブル前後にとある女性作家が、既婚者の『婚外恋愛』、『道ならぬ恋』をそう表現していたから、だと言われています。また、『不倫は文化』という言葉をテレビカメラの前で不用意に言ってしまったがために今もってなおそれがキャラクターの代名詞となった俳優もいました。そんな流れの末に、夫がいる、妻がいるのに、それ以外の人と情を通じ肉体関係を結んでしまう、そういった関係のことを『不倫』と、今の日本では言うのです。洋の東西を問わず、そんな男女の関係は連綿と繰り返されており、日本だと源氏物語のなかで高貴な人々がそんな想いにとらわれて懊悩し、そして某国の王室では中世に血なまぐさい戦争などを引き起こすもとになっていたこともよく知られているのです。『結婚』という男女の関係性の全てが正義というわけでもないでしょう。世の中には絶対に相容れない相手と結婚している人、その相手との相手との間に子をなしている人もあるでしょう。しかし、法的な婚姻関係が厳然として継続している中で燃え上がってしまった恋という事象もまた厄介であることにはちがいないのです。人の心は確かに自由であるべきで、恋愛も基本的にはそうある筈のものなのでしょう。しかし、結婚という形を選択し、その間に子供が存在している場合には、何を最大限に尊重するのか、ということを大人として、人としてまず考えなければならないはずなのです。婚姻関係にある相手、妻や夫、そして子供に対して誠実にあるべきか。それとも今目の前にいて燃え上がっている『不倫相手』という名の恋人に対して誠実であるべきか。時にその姿はそれ以前のその人とは全く異なるほどに滑稽だったり、頭を抱えてしまうほどに愚かに見えたりもします。長い時が過ぎて、全てが終わったときに、その人たちに何が残るのでしょう。不倫している自分を顧みて、または開き直って『自分に正直になっただけ』という言い方をする人も少なからずいます。しかし、それはただ理性を吹き飛ばして目の前の想いにのみ忠実になり、暴走しているに過ぎなかったり、ということが、その時にはきっと見えていないのです。